以前、私が所属していたバンドでは同期を取り入れていたんですが、その時に実際に取り入れていた同期の方法と、同期を取り入れてみて感じたメリット・デメリットを紹介いたします。
同期とは
バンド演奏と電子機器による演奏を同期させることを指します。
例えば、バンドにバイオリンを入れたいと思った時、バイオリン奏者をバンドに入れる必要があります。しかし、バンドでバイオリンを弾いてくれる人を探すのはかなり困難だと思います。そんな時にDTMなどであらかじめ打ち込んだバイオリンの音源を同期してあげることで、演奏者がいなくても、バンドにバイオリンの音を追加することが出来る訳です。
その他にも、歌のハモりをあらかじめ録音して同期してあげれば、本来なら不可能な自分の声でハモりながら歌うことなどもできてしまいます。
どのような同期をしていたか
私のバンドで採用していた同期方法はは、あらかじめDTMで同期用の音源を作成し、ライブハウスやスタジオに音源の入ったモバイル端末を持ち込むという方法です。
音源はモバイル端末からドラマーとPA(スタジオの場合はミキサー)に送ります。この音源はドラマー側とPA側で渡している内容が異なり、ドラマーの方には「クリック + オケ」をPAの方には「オケのみ」を送ります。
ちなみに私達のバンドは、モバイル端末にノードパソコンを使用していました。
同期に必要なもの
モバイル端末
ノートパソコン・タブレット・ポータブルオーディオプレーヤーなど同期用の音源を再生できる機器なら何でも良いです。ライブ中の音源の再生停止などの操作はドラマーがすべて行うことになるので、ドラマーが操作しやすいデバイスにすることをオススメします。
ただし、あまりにも低スペックなPCやスマートフォンだと途中で止まってしまったりしてしまうリスクもあるので、注意したほうがいいかもしれません。また、重量が軽すぎるものもイヤホンに引っ張られて落ちてしまう可能性があります。
スプリットケーブル
スプリットケーブルとは、ステレオの音源を左右別々に出力できるケーブルのことを指します。ドラマーとPAに別々の音源を送る際に使用します。
イヤモニター(イヤホン)
ドラマーが音源を聞く用のイヤホンです。演奏の音が大きく、音源聞こえなくなってしまっては元も子もないので、密閉型のイヤホンをオススメします。また、演奏中に外れにくいような形状のイヤホンにしておいた方が良いでしょう。密閉型で演奏中に外れにくいイヤホンだとSHURE製のものがオススメです。
それでも音が小さいという場合は、DAWの方で音圧を上げたりヘッドホンアンプを繋げて音圧を確保すると良いでしょう。
[blogcard url=”https://yuuto-kannami.com/shure-se215-recable”]
DTMで同期用音源作を作る際のポイント
ここではDTMの基本知識や楽曲制作方法などは割愛し、同期したい曲のレコーディングは済んでいる前提で解説させていただきます。解説にはLogicを使用いたしますが、基本的に他のDAWでも方法は同じなので心配しないで下さい。
DTMの基本知識やDAWの操作方法などは、当ブログでも随時記事にしているので参考にしてみて下さい。
[blogcard url=”https://yuuto-kannami.com/dtm”]
[blogcard url=”https://yuuto-kannami.com/daw”]
それではまず、サンプル楽曲を用意したので聞いてみて下さい。
1. 同期させたい音のみにする
聞いていただいたサンプルにはドラム・ベース・ギターなどの生で演奏する楽器の音も含んでいる為、同期させたい音のみソロボタン(S)をクリックしましょう。
2. マスタートラックをモノラルで出力する
ドラマーとPAに渡す音は各々モノラルになるので、この時点でステレオからモノラルに変更して書き出しましょう。
ステレオをモノラルに変える方法は、マスタートラックのステレオボタンをクリックしてモノラルに変更します。そして、ステレオで適用されていたプラグインがモノラルに変更したことによって外れてしまうので、必要なものだけ再アサインしてあげましょう。
これで、モノラル音源の完成です。
3. 新規プロジェクトに取り込む
モノラルの音源が出来たら、Logicの新規プロジェクトを作り音源を取り込みます。
4. テンポとクリックを設定する
原曲とテンポを同一にし、クリックもONにします。
5. クリックのパンを右に振り切る
最後にクリックのパンを右に振り切ります。もうお分かりだと思いますが、右がドラマーに送る音で左がPAに送る音です。バンドで合わせた時にクリックが小さくて聞こえない場合は、クリックの音のみ音圧をあげたりしてみて下さい。
以上で、同期音源の完成になります。
同期のメリット・デメリット
メリット
1. バンドにない音を同期できる
やはり同期の一番のメリットというか目的は、バンドにない音を出力できることです。これにより表現の幅は無限に広がります。
2. テンポがずれない
演奏していない音源を同時に流すわけなので、必然的に同期音源とバンド演奏のテンポを合わせる必要があります。これにより、演奏が走ることなくテンポをキープできます。また、ライブなど時間の決まっている場合でも、あらかじめ時間の調整をしておけば、時間が押すことも巻くこともありません。
デメリット
1. グルーブがなくなる
ドラマーはずっとクリックを聞きながら叩き、それに合わせてその他の楽器陣が演奏する為、通常の演奏に比べると格段にグルーブがなくなり単調なものになります。よく言えば安定してると言えますが、多少機械的になってしまいます。
2. リズム隊は楽しくない
これは私がベーシストだから感じたものだと思いますが、ドラマーはクリックにつきっきりです。なのでドラムパターンとベースラインがしっくりきた時の感動が全然ありません。私からしたら、ただクリックに合わせてベース弾いてる感覚で全然面白くありませんでした。私がバンドをやめた一つの要因でもあります。
しかしながら、世間には同期を取り入れながら楽しくバンド演奏をしている方も沢山います。ただ単に私たちの演奏力に原因があったのかもしれません。
3. ドラムが曲の構成を間違えた時取り返しがつかない
ライブ中にドラマーが構成を間違えたことはありませんでしたが、ライブ直前のスタジオ練習などでドラマーが構成を間違えるとかなり不安になります。構成を間違えた場合、すでに先を行ってしまっている同期に合わせるのはかなり困難で、ほぼ確実に演奏が止まるからです。
4. 機材トラブルがあった時に取り返しがつかない
私のバンドで使用していたPCはかなり低スペックのものだったのですが、ライブ直前にシステムが不安定になったことがあります。ライブ5分前にOSの再起動を行い事なきを得ましたが、かなりの不安が残りました。1〜2万円程度で購入できてしまうようなパソコンを使用するのはオススメできません。
函南助教授のあとがき
以上が、私がバンドで同期を取り入れて感じたメリット・デメリットになります。バンドにない音を流せるのは最大のメリットですが、それ以外のデメリットが大きいように感じます。また、機材を揃えたりDTMの知識が必要だったりと、それなりに手間がかかってしまうことは覚悟しておきましょう。